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フローズさんちのPC事情
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前書き
これは2010年の夏のこと。
夏祭りが行われてから、間も無くのある日。
【最後】を預ける愛し子と、心を分け合う前のお話。

いつにも増してバレットが病んでいます。
苦手な方はスルー推奨です。


*:;;;;;:*★*:;;;;;:*


殺恋―siren―
或いは“オズの魔法遣い”






“オズの”遺志を繋ぐ
“魔法遣い”
君が嫌いだ。
だから、君の“罪”は俺が引き継いでいてやるよ。
俺は『偽善者』だから。





蓋が取れかけたオルゴール
懐かしい音色 苦い記憶


いつからそんな風にしていたのか。
それも既に曖昧に。
ただ、椅子に浅く腰掛けて、膝の上に一羽のひよこを乗せて。
足元にも色違いの鮮やかな2羽が、ちよりちよりと鳴き交わす。

 

暮れ始めた日。
雲が掛かり隠れる太陽。
部屋に差す影。
瞬間的に現れる闇の色。

 

その奥から。

 

闇の奥から
嘲笑う声が聞こえる…

 

『優しい、いい男のバレットさん』
……また懲りずに弱い者を救って自己満足に浸ろうとしているんですか?

 

囁くようなオルゴールの音色
眠りに誘う旋律は力を亡くし
ただ朧に響いて
複雑な魔導文様はもう何の意味もない
意味が無い

術者は“消えた”

 


    羽 

               が


   な
 
お     じ

   
     ん
           だ


 

そっと手を。
その小さな温もりを。

慰めるように、誰を。何故。
 

響いているのは オルゴールの優しい音色
ゆっくりと切れ切れになって 今にも止まりそうな音
叩き壊したはずの“睡魔のオルゴール”
鳴るはずの無いその音が 甘く苛む様に 停止した思考に滑り込む



貴方に何が出来るというんです。
私達を憎むことも赦すことも出来ない中途半端な貴方に出来る事なんて、あると思っているんですか?


ちよちよ。
ちちち。ぴよ… 

ちよ。
ちぃちぃ。


ちっ ぴぃよ!
ちよっちよっちぃっ


ぢぢぢぢ!
ぢ―― ――っ……

ちっ!ぴよぴよ!
ぴよぴよちぃよ…


嘆くような声は耳に届かない。
恐れ身を寄せる姿は目に映らない。


ただ呆けたような昏い眼が
“紫”を映して 瞬かず

 

事切れた小さな命。
哀れな小鳥。
過去へのいけにえ。


どれだけの間、同じ体制で居たのだろうか。
不意にガタリと一際大きく窓が鳴った。
その音で俄かに現実へと引き戻されて、暗い灰色の眼が部屋の中を見回す。


頼りない音を最後に 壊れて鳴らないはずのオルゴールが止まった

  

ゆっくりと視線が手元に下りる。

その手の中には、冷たくなっていく小さな骸。
小さな小さな、紫のひよこ。
嘲笑う声に隠された、悲しい断末魔。

 


すべては ありもしない まぼろし
過去への妄執が見せた
偽り

 

赤にも青にも寄らない“紫”のひよこの亡骸を、両手で包むようにしたまま、生気の抜けた灰色の眼が愕然と見開く。

……俺は、いま、何を―――。

喉が干乾びたようになって、声が出ない。
視線が何かを求めて彷徨うように部屋へと巡る。
そんな事をしても、答えも救いもありはしないのに。
雑記帳が放り出してあるだけの机、からっぽのベッド、閉められたままの窓とドア。
変わらない、変えようも無い、なんの言い訳もしてくれない、光景。

 

 オ ル ゴ ー ル な ど
    ど こ に も あ り は し な い 

 

 

驚きと同時に襲うのは、罪悪感などではなく、あの時に何故こうしなかったのかという後悔にも満たない思いだけで。
そう、あの時に。
冷静な部分なんて全て失くして、ただ君に掴み掛かって行けたなら、何かが違ったんだろうか。
それとも。
もっと芝居めかして一騎打ちでも挑んでみれば気が済んだのかな…。
でも、例え千回やり直した所で、俺は掴み掛かるような真似はしないだろう。
そして、君が全てを傾けて牙を剥く事もないだろう。
何千何万やり直そうと、役者を変えようと、きっと同じ結果だけが残る。


“オズの”呪縛に囚われた“魔法遣い”
あの時対峙しないままに勝負を決して笑いながら死んだ君はそれでも仲間の為の策を見事に為して死んだ後でまでヒトをおちょくった挙句亡霊として彷徨った魂は苦痛によってカタチを亡くし存在そのものが消滅したのに『遺言』なんて残して悪夢に住み着いたまま消える兆候さえなく夜毎首を失っては俺を招いて嘲笑うように言う『また会いましょう、楽しい人!』

だから、俺は。
君が嫌いだ。

 

 

手の中の【ひよこだったもの】
今やただの鮮やかななまごみ。
慈しむように両手で包んで、悼むように目を伏せても。
そこに温度はない。温かさも冷ややかさも。
鼓動の止まった【それ】は軽すぎる程に軽くて、涙の1つも零れはしなかった。

 


手の中に、熱を落とす。
搾り出すようにして呟いたのは、魔炎の詠唱。
煙草を燃やし落として捨てるように、灰さえ残さずに、跡形もなく、焼き尽くしてしまおう。

こんな姿は、誰にも見せられない。
こんな感情は、誰にも知られたくない。


手の中で炎に包まれた“紫色”が、焼け焦げて黒くなり、次第に白い灰へと変わる。


誰の目にも触れないうちに。
誰かに気付かれないうちに。
誰からも問われないうちに。

誰が。問う相手なんて居ないのに。
誰も。思いもしないのだろうけど。


肉も骨も燃え落ちるのに、さしたる時間は掛からない。


すべてはいつもの悪夢の延長。
紫のひよこなんて最初からいなかったことにして。
そして忘れてしまえばいい。
こんな事は起こらなかった。

 


わすれてしまえばいい。
わすれてしまおう。

こんな記憶は必要ない。


白い灰さえ消し飛ばす程に焼き尽くして、その炎をゆっくりと消滅させてから。
さらに幾らか間を空けて。
ゆらりと、視線を窓へと投げる。
どこか焦点のずれたような視線が、残光の夕景を捉えて、やがて。

 

 

「―――ああ、もうこんな時間なんだ。」


きちんと焦点を結べば、呟く。
まるで先程までの意識の混乱などなかった事のように軽く、灰色の眼のままで声だけは明るく。
まるで全てがであったかのように、であった事にしたいように。
そして、もし、この日の出来事を問われても、哀れな“紫色のひよこ”の事は一度として思い出す事はないだろう。

不必要で不都合な記憶を排して何事もなかったように穏やかに笑う。
『その日はね、風が強かったけど夕日が綺麗で、ひよこ達を撫でながら、ぼんやり眺めてたよ。』
それが改竄された記憶のすべて。

 

 

―――けれど。
果たしてどれが本当の現実なのか。

哀れな“紫色のひよこ”は、本当に存在したのだろうか。
その個体が、そこに居た事は、誰も証明できない。
存在証明の不成立。
そこに居たという《名残さえない》のは、羽根の一枚すら残さずに焼き尽くされたから?
それとも、本当はそこに《ひよこなんて居なかった》から?
或いは、そこにいたのは《違う色のひよこ》だったのかも知れない。

壊れた“睡魔のオルゴール”は、本当に存在しないのだろうか。
そのオルゴールが部屋にない事を、誰も証明できない。
不在証明の不成立。
そこに《無いように見えている》のが嘘なのか、《有るように見えていた》のが幻覚なのか。
《響いた音色》が幻聴なのか、《音が止まった》ことが嘘なのか。
それとも、《無いように見えている壊れたオルゴールが鳴ったという幻聴》を捉えたのか。
或いは、本当は《壊れていないオルゴールがそこに在って音色を奏でている》のか。

夕景を眺めているうちに《白昼夢を見た》だけなのかも知れず。
或いは《夕景を眺めている》という認識すら、悪夢の中の一遍なのか。
それともやはり、すべては《実際に起こった》出来事なのか。

夕暮れに赤く染まる部屋の中で、1人きりだから。
錯綜した認識と現実がどれほど歪に入り混じろうとも、それを証明する手立ては、何も無い。

 



*:;;;;;:*★*:;;;;;:*


あとがき。(長いよ)

F:タイトルは「殺す事にまるで恋のように焦がれる」というようなイメージ。綴りも漢字の読みもサイレンで正しいのですが、あえてシレンと誤読して頂けると、なお一層イメージに近いです。
『オズ』を『自分の手で殺さなかった事』がずっとずっと引っ掛かっている、『自分が殺すべきだった』と非常に強く思っています。そんなお話。
B:……えーっと……本当にきれいさっぱり記憶に無いんだけど(汗)
F:うん、そうだね。防衛本能ってやつで記憶が抜け落ちちゃったんだよ、多分ね多分きっと。
B:…………実際どこまで現実なんでしょうか…。俺としてはいっそ全部白昼夢だったってオチを希望せずにはいられない展開なんで、どうか1つそういうオチをお願いしたいです。
F:Σなんでそんな下手?っていうか、折角謎めいた後味の悪さを演出したのに、バラしちゃったら意味ないじゃん。
B:いいから教えてくれなさい。具合悪くなりそうだから。
F:んんー。…っと、じゃあね。(こしょこしょと耳打ちして教えた)
で、手元に残ったひよこは赤と青の2羽。詳細プロフの所持品欄に記載がなくて所持してるアイテムは洋服とか一般的消耗品(香とか蝋燭とか)の類だけ、これは間違いない。それで、この時点(夏祭り終了一週間以内)ではまだ、家を買ってないから。(キラードール事件当時と同じ宿にずっといた)
B:……………。(めちゃくちゃ落ち込んだ)
F:で、かなりの重症っぷりな、というか、ほぼ完全に「重症であることは」秘匿しているだけに余計アレなお兄さんですが、すでに快方に向かっています。大分良くなってます、秘匿したまま。きっと完治しても秘匿したまま完治するんだ。快方に向かってるからこそ公開できるお話です洒落にならない。…でも『仮面つけた不審者+配布型=知り合い(オズ)に似ててムカツク→仮面ぶち割ってやる』は、もう暫く治らないと思います。まぁ、それくらい軽症だよね?
B:………それを俺に訊かれても。(まだ落ち込んでる)
F:そんなに嫌がらなくても。何だかんだいってオズとは気が合いそうな癖に。
B:だから嫌なんだっていうのにー。お兄さんアレと同類だなんて認めたくないんです、絶対。
F:でも、あるみゅんに言わせると「手前とオズは同じにおいがすンだよ(だから何だか嫌だとかどうとか)」って事らしいよ?きっと他の皆(他所様宅のPCさん達)も同意してくれると思うよ?
B:断固否定します(きっぱり)

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無題
お兄さんとオズ氏、良いと思います。
萌えました。
お兄さん萌えます、フローズさんもすごく萌えます。
『仮面をつけた不審者(ry)』をやりたくなる私は捻くれているのでしょうかww
そして、全力で同意します☆←
某PL 2011/01/30(Sun) 20:41 編集
無題
つまり我が家の薄蒼ローブ仮面は知らぬまにお兄さんのトラウマを突っついていた訳ですね。
もっと絡めば良かった!←
某仮面PL 2011/01/30(Sun) 22:08 編集
おにーさんがいたい(そういう意味ではなく)
らでぃ子「えー……真面目に考えて万一同じにおいがするって結論になったらヤだから、別に似てないってコトにしとく」
だそうです。

しかしそんなおにーさんの前で元劇団員と仲良く喧嘩してるって治りかけの古傷に塩を擦り込むようなもんですね、ごめんね★
ひょうのなかみ 2011/01/31(Mon) 15:21 編集
「…!!!」
「ひよこ、虐待、反対…!」

ひよこの恨みを晴らさでおくべきか!
という話に成りかねないので知らぬが仏ですね。
なんまんだぶ。
はかもりようじょ 2011/02/01(Tue) 02:38 編集
コメント有難う御座います
レス1

>某PLさま
なぜこれで私本体に萌えますか(笑)
やってしまえば良いのでないでしょうかね、「仮面の不審者」ww
頑張って追い回しますよww

>某仮面PLさま
某ってつける意味がないですよねもう(笑)
そう、あの時は結局「仮面」状態の時にはお会いできなくて惜しい事をしました。
薄青ローブ仮面さんに対して、妙に八つ当たり気味だったのは、こんな訳でした。

>ひょうのなかみさま
じゃあ、どういう意味なのかと小一時間(ry
らでぃ子ちゃん、それ微妙に否定してないよ(笑)
ついにバレットとアルミュールが邂逅を果たしてしまいましたからねー。
あるみゅんには、恨みがましいじっとりとした視線が突き刺さったかもしれませんね!

>はかもりようじょさま
うわぁ、ごめんなさーい!
そして知らぬが仏な話が義妹にばれて、二羽のひよこは取り上げられました。
…杖で殴られちゃうのかしら、お仕置きに。


賛成一票となんか微妙なの一票か…(笑)
フローズ 2011/02/01(Tue) 06:24 編集
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重篤なバレットおにーさん中毒者。
ユーフェミア&レオポルドorエレナ&ディリーを復帰させたい。
悪役PCをやりたい病・新PCを入れたい病・イベントを起こしたい病に掛かっている。
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