忍者ブログ
フローズさんちのPC事情
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


――― アルミュールだな ―――

そう呼ばわられたのが、事の始まり。
顔を会わせた途端に挑まれて、それから先は、もうずっとこの有様。


*:;;;;;:*★*:;;;;;:*

カイコウ



騎士は邂逅する。
ある月光の冴えた夜、それが自らの終わりと始まりに繋がるとも知らず。
命を刈る剣が与えられた役。名に負ったのは纏う「鎧」の一言。
血に酔い、殺戮の示すまま。
欲も記憶も狂気に委ね、ただ巣食った苦痛を紛らわすように、壊し尽くす為、抜き放たれる大剣。



名を問われ、応と返せば。
相対す豹は、興奮を一点に研ぎ澄まし。
呼応する戦闘態勢に哄笑を。

「 ――ク、クク…ハッ…ハハハッ!」

「 と、」

長大な両手剣を片手に構え、月の光に刃を光らせ。
刃を脅威とせぬ武装で踏み込む、剣よりも内側の間合い。

狭まる。一気に詰まる間合いに、引き攣るように上がった口の端。
ダートラディアの踏み込みが距離を詰めきる前、右の抜き手が放たれアルミュールへと届く前。
振り下す剣の太刀筋は、意外にも正統な騎士の剣。
それを左の肩で受け止めて、その動きで右の抜き手が逸れて行く、響くのは硬い金属音。

 ガァァン!

肩に仕込まれた金属片、切り落せない強度、押し込む事はせず、刃を引いて…。
凶器となった指先は、逸れるままに顔を動かす動きだけで避けた。

「 ~~っ、ちっと痺れた!」

再び踏み出す。右手が返す刀のように再び閃く。
けれど、その右手は翳した盾に阻まれる。
盾の影では、詰まらなさそうな舌打ちが、1つ。

「軽いぜ…?」

「ふぅん、どっちがだろうな?」

するりと退かれる右手、盾を素手で裂けようはずもなく。
不気味な嗤いを湛えた口端、どろりとした凶眼に視線を合わせる事は無く。
踏み込む角度を変えるべく、そのまま突っ込む事もなく。
過ぎ去る瞬間の思考に視線が刹那逸れ、そんな隙が許される訳は無く。

「…ク…ハハハ!手前ェに決まってンだろ!?」

「 っ! 」

場に満ちるのは狂気と狂喜。
嗤う。哂う。盾をその場に落とし、クレイモアを両手持ちに構え直して、嗤う。
一歩の踏み込み、長大な両手剣が剣速を増して横薙ぎに振るわれた。
そのまま横腹に叩き付けられる刃、ダートラディアが着込んだミスリル繊維は断てずとも、振り抜けば強烈な打撃を与える。
横合いへと向けて、女性にしては大柄な体格が吹き飛ばされて、転がり、噴水の縁に肩を打つようにして止まる――――

「オイ、どうした。遊んでくれンだろォがよ?」



断章



密林の奥深く、大地母神の祠に偽装された、狂気と報復の女神を祀る邪教の祠。
壊れた女神像の足元で、壁へ寄りかって座り込む、1人の騎士。
先日の私闘で強かに打たれ半壊した臓腑は、邪神の加護を持ってしても簡単には癒える事がなく、碌な身動きも取れぬままに数日が過ぎ、飢えと渇望だけが募って。

「……治らねェ…なら……手前ェ等に、くれてやる。蠱ども―――」

狂気の囁きに委ね。
身の内に巣食うものに与える、自らを。闘いの為に、捨てる。
頭の中で這い回る蠱が、身の内に更に闇を呼び込み、ざわりと歓喜に震える。
新たに蠱の寄生した領域が広がる、内側からの侵食に、じわりと苦痛が滲む。
直ぐに臓腑は食い尽くされ。残るのは、命を繋ぐ事さえを忘れた、狂気――。

「…ク、ク…ハッ…ハハハ!」

苦悶の表情に顔を歪ませながら、ただ哂う。
一頻りの哄笑が収まれば、乾いた唇が紡ぐのは、母なる神への祈りにも似た、狂える意志への逆しまの賛美。
騎士の狂気に応えるように、女神像からも瘴気めいた気配が立ち昇る──。
輝かぬ魔法、神聖にして邪悪な、ヒトが触れてはならぬもの、狂気の神の手…。
それは邪神の加護。この場所は邪教徒の身を癒やす祠。



断章



騎士は開口する。
ある雲掛かる月の夜、闘いへの渇望が支配を振り切った事も知らず。
名に負った纏う「鎧」の一言。闇に守られ、闇を呼ぶ。
答える言葉はただ空ろに、命さえ投げ出した存在には、確かなものはその力だけ、しかし剣が抜き放たれる事はなく。

「ああもう。「見ぃぃぃぃつけたぁぁぁあぁぁ?」とか、悪趣味に覗き込んで叫ぶべき? けたけた笑いながら? つーか静かに終わっとこうと思ったのに……」

「あぁ、ラディちゃんもいたんですね」

「居たよ。超居た」

「あァ?…うるせェな、何だ手前ェ等は」

「あらあら、覚えたって言ってた割りに忘れちゃいました?」

「………知らねェな」

「あらあら、薄情ですねぇ」

「知らねェってンだろォがよ!」

目前にある、言葉を投げる存在に、ただ睨むような視線を送るばかりで。
一度敗北を喫して、殺され掛けた相手を前に、鈍い反応。
それは頭に巣食った蠱が、記憶する事を阻む故。知る事も覚える事も出来ず。
知らぬとしか返す言葉もなく。

「 哀しいな……哀しいなぁ、アンタ。
 言いたいコトは山ほどあったんだけど……ちょっと、「違っちゃってる」みてーだし。いいや、もう」

そんな諦めたような言葉を吐かれても。
僅かに。
僅かに一瞬、訳が分からないと、そんな表情を浮かべるだけ。
主の困惑と苛立ちを表すように、ガチャリと鎧の継ぎ目と剣帯が鳴いた。

「今度は、逃がさなねぇ」

言うや、黒豹は地を蹴る。
合わせて後退しつつ片腕には兜を抱たまま、頭部目掛けて孤を描く左足は、重装鎧の片腕で受け止めた。
メイスの一撃にも似た重い衝撃、激しい金属音、それでも何故か、闘いへの昂りは煽られず。
囁く、狂気が、身の内で、頭の中で。

「煩ェ……」

叩いた直後に、捻じ込むでもなく引いていった蹴撃。
蠱が這う。不快そうに眉を寄せて、その足を捕らえる事も、打ち掛かる事もなく。
漏らした呟きは、目前の相手へか、身を苛む蠱にか狂気にか。

「ああ、そうだ。聞いておきたいことがある。」

「  ……あァ? ンだよ…」

至極どうでも良さそうに、しかし、応じた。
それは、目前にある黒豹を、その存在を認めたという事に他ならず。

「アンタが闘ったり殺したり何なりする、理由や言い訳やらが知りたい。それによっては――」

そこから先は言葉にせずに、顎の下へと右手が。
当たれば意識も揺らすだろう一撃は、けれど更に後ろへと引いて躱されて、豹の右手は空を切る。

「愉しんで何が悪ィ……」

静かに落とされた呟くような返答は、答えにならない答えで。
今や臓腑までも蠱に売り渡した、その蠱が呼ぶ、闇――。
その中に、身を委ねよと、狂気の呼ぶまま。盾を兜を手にした重装鎧の姿が、呑まれて消える。
後に残るのは、

「愉しい……だけなら、好かったんだけどなァ」



断章



「余計なコトは一切考えねーで、って言おうとしたんだけど。必要なかったか」
「――行くぜ?」


「あー、五月蝿ぇ」
「……っ! うるせェ野郎だな、手前エ!」
「 おろ。同意見。……しっかし硬そうだなぁ、フルプレ。」


「ああ、そういや頭もポンコツか……」
「誰がポンコツだ手前ェェェェェ!!」
「おーっと、地獄耳!」
「どっちかっつーとポンコツはアレクシードの方だと思う!」
「何だとお前! もっぺん言ってみろ!!」
「地獄耳ですね!」
「何だ、さっきから気が合うじゃねェか?」
「あー、ホント、三女神の残酷なこと。オレ運命論者じゃねーけど。」



断章



騎士は廻考する。
ある赤く染まる落日の刻、果たすべき役割を忘れた事さえ知らず。
招く闇に何かを委ねる事はなく。憎悪も悪意も既になく。
ほんの僅かな正気を宿して、ただ静かに触れたその時を―――。


「……なんか、クリーンヒットが多いような気がすんだよね」

「うるせぇ。避けンなァ苦手なんだよ…」

首元には右の爪先が、右手には左足が。
地に背を付けて抑えられた体勢のまま、クツリと喉を鳴らして自嘲を漏らした。
未だ狂気を宿す淀んだシーグリーンの眼が、上から覗き込む錆色へと向けれて、左の指先が軽く招く。
悪意も敵愾心もなく。不思議と、ただ“そうする”のが当然のように。

「ああ、動き難そうだもんな」

手は抑え付けたまま。招くのに応えて首元の足と右手を入れ替えようと、首元から足先が離れる。
入れ替わりに首へと伸びた手と擦れ違うように、鎧に覆われた左腕が伸ばされて。
組み敷かれたような体勢で、触れようとするのは相手の喉元か―――、否。

その首へと触れるかと見えたガントレットの指先は、喰らい付かれて阻まれた。
けれど、その手が触れようとしたのは、命の脈を止める為ではなくて。
喰い止められたままの手を、それでも動かして、サラリと彼女の頬を一度だけ、撫でる。
声は上げられないが「愉しかった」とでもいう、挨拶のつもりで。

そして騎士の首元へ伸ばされた手は、阻まれる事無く届き、頚動脈を締め上げる。
甲が頬へと触れた事で、目を丸くしてきょとんと首を傾げる、その顔を見て。
ただ、愉快そうに口元が引き攣るように、哂う。
意識が落ちるまでの苦しみは、蠱に頭を蝕まれ常に身を苛み続けた苦痛と、臓腑までも明け渡した苦悶に比べればさしたる事も無く。

指先を捕らえたまま。喉から、ふっと小さく笑いを漏らし「……ん。」と、頷いた。
その応えを受けて、最後に僅かに正気めいた眼の光を垣間見せて。そのまま意識を手放す。

詰まらない野垂れ死にで終わるよりも、その手で。

そう終わる事を望んだ騎士の内、臓腑の代わりを果たしていた蠱達が騒ぐ。
闇を、闇を――。頭の中で這い回る、音。
けれどもう、何一つとして応える事はなく。
身の内で、ただ蠱達だけが、ざわざわと悔しがって蠢く…。



断章



「悲劇に付き合ってやるつもりはねーし」


「んー……。オレも結構、悶々としてるし。今」
「悶々と……? お前は納得いかなかったのか、この『終わり』に?」
「さてね。強いて言うなら、理由不足だ。同意殺人じゃねーかこれ。つーか補修するために糸と針も持ってきたのに、こいつ殆ど外傷ねーでやんの。殴りにくいしほんとふざけんなって感じだわ」
「あー、そーいうことか…… そっか。なら頼むわ。」
「そうさせてくれると、有難い」


「……おい、重いぞ。最後まで邪魔じゃねーかフルプレ」



断章



騎士は偕行する。
ある曇に覆われた逢魔ヶ刻、何故その呼び声だけが自らの元に届いたのかも知らず。
邪神の加護を力と変えて身を保ち。亡霊となり、現し世の地を踏み締める。
“蠱”の与える苦痛を抑え、狂気と正気の狭間に揺れながら、繰り返す生ぬるい日常。


傍に在る。
恋などという甘やかな感情でも、友情などという穏やかな繋がりでも、なく。
それでも、気紛れに差し出す盾と、手は。
そうするのが当たり前だとでも言うように、何の理由も必要とせず。
差し向かいで向ける剣は、ただ愉しむ為だけに。

共にある。
その命の尽きるまで。
その命が尽きたあとも。
その命が尽きる瞬間にこそ。


かつての仲間の死に絶えた今となっては、彼の騎士の過去を誰が知ろう。
記憶を壊された今となっては、彼の騎士の名を誰が知ろう。
その名に負った「鎧」の一言、同じ文字から綴られる、その本来の名を。
近しくある者が親しみを持って呼ぶとき、同じ音を成すのだと、誰が知るだろう。
そして、そう呼ぶ事を許したのは。たった一人だけだと、誰が。

騎士に加護を与えた女神に問えば、あるいは答えが得られもしようが、誰が邪神に問えると言うのか。

彼の名は―――



*:;;;;;:*★*:;;;;;:*

あとがき。

F:名前を明かさないで終わってみました。実は邪神様も“秘めたる名”の女神とかいう裏設定。
で、本人はあんまり覚えてないと思うけど、“非恋”(恋に非ず、not誤字)な2人の馴れ初め的な文章です。
あと本名はいつかロールの方で明かす事が出来たら楽しいなぁ、とか、企んでますが。どうなる事やら。
途中の会話パートには、レーラちゃんとアレクシード君(今もういません)が友情出演です。ぱふ。
al:…………。言い残すのは、ソレだけか?
F:Σなんでご機嫌斜めっ!?

拍手[0回]

PR
コメントを書く
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード
無題
壁|ω・*)ジー…

あ、あるみゅん萌え…←
にやにやしますた。
某PL 2010/12/28(Tue) 19:33 編集
正座で
ごちそうさまでございました(礼)

広場と遺跡のログは取ってなかったんですよね私。懐かしいなあ、らでぃ子が泣く。
ロールで明かしてもらったら爆発しそう。色んな意味で。
ところで泣くというか今物凄く締められて、なんか紅潮しながら締められt(ぐしゃ)

(じゃむ。)
ひょうのなかみ 2010/12/30(Thu) 01:04 編集
レス
>某PLさま
そんな壁に隠れなくても噛み付きませんから大丈夫ですよ!
萌えて頂けたなら何よりです。コメント有難う御座いましたー。

>ひょうのなかみさま
おそまつさまでした。
広場懐かしいですよねー。懐かしさの余りにやらかした思い出SSです。
らでぃ子ちゃん、ハンカチあげるよ……って Σ締めちゃだめ!
フローズ 2011/01/01(Sat) 03:05 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
 HOME | 19  15  13  63  50  36  32  25  18  17  49 
Admin / Write
プロフィール
HN:フローズ(フローズヴィトニル)
メインPC:バレット・リング
重篤なバレットおにーさん中毒者。
ユーフェミア&レオポルドorエレナ&ディリーを復帰させたい。
悪役PCをやりたい病・新PCを入れたい病・イベントを起こしたい病に掛かっている。
ペティット参加者様に限り「リンクフリー」&「うちの子ご自由にお使い下さい」
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]