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フローズさんちのPC事情
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まえがき。
このSSは「2010.11.28の闘技場の外にてオーラス君とバレットのロール」の、その後を描いて下さった
灰色さまのSSの対にあたるものです。
やっぱり手当てのシーンはありません(笑)
例によって例の如く、バレットが病ん絶好調なので、苦手な方はスルー推奨。


*:;;;;;:*★*:;;;;;:*


錯恋想双
(サクレンソウソウ)
―錯綜/幻想・双つの命が重ねた恋情・倒錯する思想―



視線を受け止めた時に保護欲が涌いた。
袖を掴まれた時に欲しいと思った。
その涙を見た時に時に逃がせなくなった。
“大切”だと呼ばれただけで、全てを賭けても良いとさえ。
古い鎖を捨てさせるのは、ただ君の言葉ひとつ。
その言葉をくれるなら、新しい鎖をかけて。
俺の持ちうるものすべて、恋も力も、命も愛も、君のものだよ。

.:*゜..:。:.::.*゜:.。:..:*゜..:。:.::.*゜:.。:.

「……――オーラス、」

蝋燭の切れる頃に落とした声は、自覚しているよりも擦り切れていた。
暗い中で開いた目に映るのは、夜闇に輪郭を溶かす褐色とシーツのコントラスト。
涙を受け止めてくれた小さな肩。
芯を掴まれるような安息感と共に生まれるのは、気道を詰まらせ肺が軋るような苦しさ。
愛しく呼んだ名前のあとに続き、唇が微かに震えて、そのまま引き結ばれる。
その短い言葉は、決して音として紡がれる事はない。
常願う『傍に居て』と請う言葉の裏側、求めているものは明かさずに。
それを明確に言葉として願えば、もしかしたら、叶えられるのかも知れないけれど。
幼い君に、これ以上負担を掛けることは出来ない。

ただでさえ、こんな思いをさせているのに。
ただでさえ、こんな風に甘えた事をしているというのに。



この僅かな間に交わした会話が追い切れない速度でフラッシュバックする。
時刻を、行為を、巻き戻すように。



薄い背に腕を回して、そっと、ゆっくりと、ベッドへ倒して見下ろす。
開かれた薄灰色は滲んでいて、そのまま俺の眼の色を正確に映さないでくれれば良いと、都合の良い事を願いながら。
「…ごめんね、」
護りたいと思っているのに、悲しませるばかり、悩ませるばかり。
歯止めの利かないこの心は、少しずつ重さを増し、僅かづつ軋みを増し。
それでも君に手渡す時には温かく柔らかいものにして渡せるようにするから。
触れないでは居られないよ。
好きになってごめん。
《ごめんね、愛してる》

白いシーツの上、ナイフよりも本が似合うはずの拳を、固く握り締めたのが見えた。
宥めるように黒髪に手を添えて、その頭を覆うように抱き寄せて。
零れる涙が濡らすのは、左と右を分け合った場所。
「大丈夫だよ、」
「こんなの、大したことない。大丈夫だよ。」
大丈夫だと繰り返すのは、他に上手い言葉を見つけられないから。
暗示に掛けるように、同じ言葉を何度も何度も…。
これからもきっと悲しい思いをさせてしまいそうで、けれど、逃がしてあげる事は、出来ないから。
柔らかい言葉で見えない檻を作る。
《近くに居てくれない君を目に見える檻で囲ってしまおうかなんて思うだけで出来ないけれど》

空気に混じる純度の高いアルコールの香り。
消毒液としてガーゼの切れ端に含ませた間に揮発した分が鼻を突く。
怯えるように横に振られた首に、困ったような笑みで返して。
「…ねぇ、顔上げて。お願いだから」
「……ごめんね、」

こんな程度の傷は日常でしかなくて。
互いの喉元に刃を向け合うような相手を好きになるのも、初めてではなくて。
それでも、今度ばかりは…、…少し堪える。
君が泣くから。
ねぇ、どうか、そんな事で傷付かないで。
《俺の身体程度のもので君の心を引き裂けるというなら俺はいつか傷付く事を君の気を引く為の道具にしてしまう》

俯いたまま顔を上げてくれない君のすぐ傍で、薬瓶を手に取る。
とぷん、と。僅か、液体が揺れた。
使うのは少量で、それこそ手馴れた、毎度の処置。
「大丈夫だよ、」
「傷、っていう程のことじゃないでしょう?そんな顔しないで」
小さな傷。浅いひと筋。
“それ”が、こんなにも君を不安にさせるなんて。
刃を手にして向き合う事に怯えた姿を、そのままにしておくなんて出来なくて、刺されても良いつもりで抱き締めたけれど。
こんな事なら、もっと違うやり方で引き止めれば良かったかな。
《それでもこうして傷を負えば君はまた俺から逃げられない事を自覚してくれるでしょう?》



ノイズのような切れ切れの映像の乱舞が終わる時。
白昼夢のなか乖離した、腕の中へ凭れた“俺”と、腕の中で泣いていた《俺》が統合される。
逆巻く物語は再び逆行する。始まりの先はこの先へ。



細い呼気を深く。
髪を撫でてくれる手のゆっくりした動きに合わせて、肺の中身を入れ替えるように緩慢な呼吸をしながら、決壊したものを宥める。
顔を上げられるようになった頃には、燃料が切れそうになったストーブの火が、蝋燭に続いて消えようとしていた。
ああ、このままじゃ冷えてしまうかな。なんて、まともな思考力が戻って来ると、幾度も髪を撫でた手の感触が今更に擽ったく思えて、少しだけ口角が上がった。

「―――…ありがと、…もう、大丈夫………」

泣いたせいか多少重たい頭を、預けていた肩から名残惜しく持ち上げる。
瞳を閉じた顔を間近から見下ろし、褐色の頬へと軽く指を滑らせた。
こうして触れらる事の愛しさに、息が詰まりそうになる。
撫で包むようにして、まだ擦り切れたままの声で告げると、その瞼が震え、ゆっくりと開いて…

ああ、その瞳に写るのが、俺だけであればどんなに――――

そんな思考をまた飲み下して。
いつも通り笑みを浮かべて、君の言葉を待とう。
本当に大丈夫かと問い返されたなら、頬に口付けを1つ落とそう。
出来る限りの柔らかさで、包むように、慈しむように。

.:*゜..:。:.::.*゜:.。:..:*゜..:。:.::.*゜:.。:.

 それでも、こうして傷を負えば……君は、また、俺から逃げられない事を自覚してくれるでしょう?
 俺の身体程度のもので、君の心を引き裂けるというなら。俺は、いつか傷付く事を“君の気を引く為の道具”にしてしまう。
 近くに居てくれない君を、目に見える『檻で囲ってしまおうか』なんて、思うだけで、出来ないけれど。
 ……ごめんね、愛してる。


*:;;;;;:*★*:;;;;;:*


あとがき。
B:…………。
F:…………。よっわ。
B:Σそんなっ お兄さんこれでも頑張ってるのに!
F:まぁ、他の部分で妙に精神的に頑丈な分、恋人依存症でここら辺の心理はへろっと弱いとは決めてたけど、最近ちょっと弱すぎない?
B:この時はちょっと色々な事が重なってダメージ過多だったんだってば。……まぁ、もうちょっとしっかりしないと、とは。自分でも思ってるけどさ。
F:そうそう、もうちょっと頑張りなさいよ。そして逆行ストーリーなんて手法にチャレンジしてみたはいいものの、どうにもそれっぽさが足りないあたり、私ももうちょっと頑張るべき。
B:あー……、まぁ、精進あるのみってことで…。
F:最期までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

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プロフィール
HN:フローズ(フローズヴィトニル)
メインPC:バレット・リング
重篤なバレットおにーさん中毒者。
ユーフェミア&レオポルドorエレナ&ディリーを復帰させたい。
悪役PCをやりたい病・新PCを入れたい病・イベントを起こしたい病に掛かっている。
ペティット参加者様に限り「リンクフリー」&「うちの子ご自由にお使い下さい」
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